おお! 聖乙女よ! 今日もあなたの華のかんばせを拝見できて、私の心は霊峰チャタムの頂きを越す白鳥のように舞い上がっているよ! ごきげん麗しゅう!
霊峰チャタムといえば、真夏でも頂きの雪が溶けぬという。夏の青空に輝く白い雪…考えただけでも美しい眺めではないか! かなうならば私も、ぜひいちど、この目で見てみたい!シャムロックは雪の多い国ではないが、私は雪が好きだ。幼いころ、雪が降ると、手のひらに置いていつまでも眺めたものだった。乳母はしもやけになるといって心配したが…いやしくも愛の寵児にして月光の美公子たるこのリップ、美を求めるに、しもやけごときを恐れていてはならないと、あなたもそう思うだろう?ホーリーの細工のような、繊細な美しい姿をした雪の結晶だが、残念ながら手のひらにとどめ置けるのはほんの一瞬だ。あっという間に溶けて、消えてしまう。はかなくも美しいかの姿を、手にとどめられたらどんなに素晴らしいか……そう考えた先人が、レース細工を生み出したに違いない、私はそう信じているのだよ。
そうそう、いにしえの聖乙女にも、レースに並々ならず心惹かれた方がいらしたらしい。その方の覚え書きを、先日図書館の書庫で見つけたのだ。なにぶん古いものなので、あちこち虫が食ったり汚れたりして、あなたのお役に立つかはわからないのだが、ご覧になるかい?