◆ 島に向かう光 ◆
作:いずみ

他国からの連絡船と、貿易船がほぼ同時に付いたせいで
港はいつも以上に賑わいを見せていた。
たくさんの荷が降ろされては、別の荷が積まれていた。
港の隅にある女神像の傍で、何か熱心に祈っているおばあさんがいた。
その様子を気にした青年が近くの船乗りに尋ねる。
「何を祈っているんだ?」
「悪いことが起きないようにだってさ。」
尋ねられた船乗りは、他人事のように答えてから、
荷作りしていた手を止めて顔を上げる。
「近頃、夜になると光がさ。ほら、みえるだろ?あの島。」
そういって、指差された小さな島には、どの小船も避けているようだ。
「あの島には、船乗りの守り神がすむって言われててさ。」
その話は聞いたことがあると黒髪の青年が頷く。
「そんな島に光が向かうなんて、祟りの前触れじゃないかってね。
 でも、島にいくバカは船乗りの中にはいないし、きっと見間違いに決まってるさ。」
遠くから船乗りをしかる声がして、あわててその場を離れる船乗り。
「ヤフネ女神の使い、シャンダ・ランガのすむ島か…」
探るようにその島を見ていたが、船の方でなにやら騒ぎが起こったようだ。
青年は海に背を向け、騒ぎの方へ歩いて行く。
その背後で、誰にも見止めがれることもなく、黒い影のようなのが空を舞った。